高齢級人工林の個体管理の指標として個体間競争の有効性を評価するため,四国地方の 44~91 年生のスギ・ヒノキ人工林において周辺木との競争が直径成長に及ぼす影響を調べた。各林分の胸高直径(DBH)の成長量は 0.30~0.39 cm yr-1 の範囲であった。DBH 成長量のばらつきを期首の DBH を説明変数とする線形モデルによって比較したところ,スギ林と比べてヒノキ林では成長のばらつきを十分に説明できなかった。このモデルに対し,周辺木の胸高断面積合計に基づく競争指数を説明変数に加えた場合,モデルの説明力の改善度は競争の様式によって異なることが示された。すなわち 44~50 年生の壮齢過密人工林においては,自身よりも大きい個体から負の影響を受ける一方向的競争が個体の成長に大きな影響を及ぼしているが,65~75 年生の人工林ではサイズに関わらずすべての周辺他個体からの影響を受ける双方向的競争の影響が大きくなる傾向がみられた。以上の結果から,高齢級人工林の管理においては個体間競争の効果をふまえた個体の配置を考えることが重要であることが示唆された