上空からの自律的な情報収集システムとしては,気球や航空機を使うシステムが提案されいるが,気球を使うシステムはヘリウムガスの常備を必要とし,展開に比較的長い時間がかかり,ヘリウムガスを扱うために専門家が必要であり,風が強い時に飛ばすことができない.また,航空機を使うシステムは短時間で展開が可能であるが,燃料の制限により長時間の活動が困難である.本研究では,バルーンや航空機を用いる他の上空からの情報収集システムを補完し,簡便に利用可能で長時間の活動が可能であり,自然エネルギーである風力を利用するカイトをモデルとしたシステムを提案し,テザー係留型飛行ロボットとして,実ロボットの製作とその飛行実験を行っている.また,実ロボットによる実環境における実験を繰り返し,制御器を設計することは自然の風状況を制御できずに困難である場合が多いため,シミュレータも開発している. 論文[1]では,人の操作を規範とした制御方策を獲得するために3入力1出力のファジィ制御器を設計し,実ロボットによる飛行実験では,設計者が定義したファジィテーブルを用いたファジィ制御を行ったが,このファジィテーブルは実際の人の操作と異なる可能性がある.また,ファジィ制御におけるメンバーシップ関数のラベル数が増えるとルール数が増え,これら全てを人手で定義することも困難である.そこで,本稿では人の操作データを用いたファジィ制御パラメータの学習手法を検証する.人の制御方策を反映するために3入力1出力のファジィ制御器を用いたが,環境を表す情報が少なく,人が操作するようにテザーラインの長さを延長する制御が学習できなかったため,風が変化する環境ではロボットを安定して制御できなかった. 本稿では,人の操作を規範とした制御方策の獲得を目指し,ファジィ制御パラメータの学習の他に,重み付きk近傍法,人工ニューラルネットワークを用いる.ファジィ制御パラメータの学習は,人の操作を規範とした制御方策を獲得するために,4入力1出力のファジィ制御器に拡張し,それぞれの手法により設計した制御器の性能をシミュレーションを通して検証する.また,検証の結果,最も人の制御方策を反映した重み付きk近傍法は全ての学習データを探索するため,学習データが多い場合に処理が重くなる短所を持つ.そこで,探索に用いる学習データ自体を削減する手法を提案し,シミュレーションを通して有効性を示す.