人はエージェントの行為によって利益を得たとき,無意識的に相手に対し返報義務を感じることが示唆されている.しかし返報義務感の影響を考慮したHAI研究は充分に発展していると言い難い.本研究ではエージェントが援助の意図をもつと思わせにくい援助方法を提案することで被援助者に心理的負担を与えず支援することのできる援助方法の設計を目指した.またこの援助方法を実現するため,エージェントは被援助者が目的を達成しようとする行為と異なる方法で目的達成を援助するアプローチをとった.実験の結果,被援助者はエージェントの振る舞いが自分の目的達成と無関係であると感じたときに返報を行いにくくなることが示唆された.本研究の成果はエージェントが社会に浸透した際,人の生活や作業をより円滑に援助することに寄与すると期待される.