産総研は,「革新的な技術シーズを産業界に橋渡し」することを最大のミッションとする国立研究開発機関である.そのために,次世代の技術シーズを作り出す「目的基礎研究」,それを産業技術として高める「橋渡し前期」,企業と密着して事業化に繋げる「橋渡し後期」の3つのフェーズを切れ目なく推進している.本稿では,スピントロニクス,単層カーボンナノチューブ,SiCパワーデバイスの3件を例にとり,これらの目的基礎研究から橋渡しに至る研究スタイルを分析し,成功の要因を「独自性を有する技術シーズの確立」,「技術力を有し産総研との連携に強くコミットする企業の存在」,「適切な規模,時期,体制での公的資金の投入」を挙げるとともに今後の課題を示した.