カンボジアの地方における卒前卒後教育の質を向上させることで助産ケアを改善するために、2010年より2015年まで「JICA助産能力強化を通じた母子保健改善プロジェクト」が実施された。 プロジェクトの目的は、医療従事者としての経験・入手可能な最良の研究知見・患者の価値観の複合である医療(EBM, Evidence Based Medicine)によるケアを「根拠に基づいた質の高い助産ケア」とし、女性を中心として個別化した理想の助産ケア提供を実行可能にすることであった。 プロジェクト対象地域のみならず「根拠に基づいた助産ケア」をカンボジアに広く伝えるために、カンボジアの国家プログラムとして行われている「保健センター助産師研修」に助産ケアの概念、「基礎的緊急産科新生児ケア研修」にケア提供者としてのあるべき姿勢等を改訂して導入することを試みた。 ミレニアム開発目標5の達成後、カンボジアにおいて妊産婦死亡をより削減するためには、助産ケアの質の向上が必須となる。既存の助産師卒後研修に、新たな助産ケアの概念を提示し、ケア提供者のあるべき姿勢を示すことは、これからケア改善に取り組んでいくために必要な第一歩であったと考える。