稲の登熟温度が低いと米胚乳中の澱粉および細胞壁分解酵素活性量が大きくなり,米飯食味に影響していることが示唆された.山形県産の3品種を用いて,2009∼2013年に生産された産地特定が可能な玄米サンプル139点の解析を行った.その結果,5年間の8種類の米胚乳中の酵素活性量の変動係数(標準偏差/平均値)は,0.466 ( β -ガラクトシダーゼ)∼0.174 ( β -グルカナーゼ)となり登熟温度により各酵素活性量に差異があった.登熟温度と米胚乳中の酵素活性量との間には α -アミラーゼ(r=-0.749), β -アミラーゼ(r=-0.519)および α -グルコシダーゼ(r=-0.730)と負の相関( p< 0.05)が得られた. β -グルカナーゼ, α -マンノシダーゼおよび β -キシラナーゼに関しても負の相関の傾向がみられた.すなわち,登熟温度が低いと米胚乳中の酵素活性量が大きいということが示唆された.各試験年に実施した食味官能値の総合値と米胚乳酵素活性量間には, α -アミラーゼr=0.392∼0.535)と4ヵ年で正の相関が得られ( p< 0.05),最も高温障害が出た2010年も傾向がみられていた. α -マンノシダーゼ(r=0.162∼0.542)および β -グルカナーゼ(r=0.209∼0.495)とついで正の相関関係がみられた.これらの結果,食味官能値と米胚乳中の酵素活性量間には基本的に正の相関がみられ,活性量が大きいほど食味が良い傾向が示唆された.