本研究では, 自己決定理論による中学生の教師との関係の形成・維持に対する動機づけを測定する尺度を作成し, 教師との関係の形成・維持に対する動機づけと担任教師に対する信頼感との関連を検討した。中学生483名を対象に調査を実施した。第一に, 探索的因子分析を行い「教師との関係の形成・維持に対する動機づけ尺度」を作成した結果, 「内的調整」「同一化」「取り入れ」「外的調整」の4因子構造であることが明らかになった。第二に, 教師との関係の形成・維持に対する動機づけと担任教師に対する信頼感との関連を性別に検討した。その結果, (1) 「自律的動機づけ」が担任教師に対する信頼感と正の関連, (2) 「統制的動機づけ」が負の関連を示すこと, (3) その関連の様相は性別に違いがみられることが明らかになった。(4) また, 教師との関係に対する動機づけで調査対象者を類型化した結果, 統制的動機づけの高い類型の生徒, すべての動機づけが低い類型の生徒の担任教師に対する信頼感が低いことが明らかになった。以上, 本研究の結果から教師と生徒の信頼関係は, 教師側の要因と生徒側の要因が相互作用を繰り返すことで次第に親密になっていく過程である可能性が示唆された。