日本の林業や木材産業を活性化させるためには, マーケットイン型の産業構造が求められる。このような産業構造は安定供給システムや森林管理の構築においても重要である。このような観点から本研究では, 秋田県のスギ人工民有林を対象に資源量調査を行い, 利用用途別の材積割合を明らかにした。また地形・地理的特性を考慮し, 供給・利用可能なスギ資源量を推定した。利用用途別の材積割合は, 製材用が約40% と最も多かった。斜面傾斜角が20度以下あるいは道路からの距離が50m 以内に区分される林分の蓄積量は, 齢級別蓄積量のそれぞれ約半数を占めていた。これらの結果から, 秋田県における供給・利用可能なスギ資源量の現状は, 5~10年程度の短期的な県内の需要量には応えられるポテンシャルがあることは明らかである。一方, 将来的な安定供給の持続可能性についてはさらなる研究が必要である。本研究で示したような資源量データを整備することで, 林業サイドでは需要に応えるための適切な施業の実施, 木材利用サイドでは将来的な質と量を見据えた需要の拡大や新規需要開拓の促進に繋がると考えられる。