京都市内の広葉樹二次林において,ナラ類集団枯損(ナラ枯れ)が発生した後の森林の動態に対して,ニホンジカ(以下「シカ」)がどのような影響を及ぼすのかを調べた。幹密度および胸高断面積合計が,ナラ枯れ発生の前後でどのように変化したのか,また下層木の樹種構成が,ナラ枯れにより形成されたギャップの内外でどのように異なるのかを検討した。その結果,シカによる剥皮は発生しているが,それによる上層木の枯死でギャップがさらに拡大しているという現象は認められなかった。また,ナラ枯れ跡のギャップ内でも,更新木は少ないものの,まったく更新していないということはなかった。ただし,下層木の状況からみると,主に更新している樹種は,クロバイ,ナンキンハゼといったシカの不嗜好性樹種か,もともと数の多いアラカシ,サカキ,ヒサカキといった樹種に限られていた。