出版社:Japan Science and Technology Information Aggregator, Electronic
摘要:θSaito and Hoshi(1998,2000), Saito(2000)において,主要部移動を伴った意味役割の付与が可能であるという分析が提案されている.本稿は,この分析の日本語における統語的複合述語への適用を試み,この分析の有効性を示したものである. 統語的複合述語の特徴は,派生的θ標示分析により適切に捉えられること,そしてこの分析を用いることで,統語的複合述語の構造は,複合述語を構成する動詞の項構造と格に関する情報から適切に導かれることを示す.また,この分析に基づいた場合,日本語における目的語の格は内在格であることを示し,複合状態述語文における主格目的語の格はTenseにより認可されることを主張する.さらに,日本語においてTenseの格素性は多重素性照合関係を持てないことを示唆る.そして最後に,コントロールは意味役割を二つ以上持つ単一の連鎖として捕らえられることを示す.