本研究は、スペイン語の語順(SVO/VOS)と2つの焦点タイプ(広焦点/対照焦点)の音声的実現の関係を調べることを目的とした。発話において対象焦点を音声的に実現するために関与する音響パラメータとして、ターゲット語の持続時間、ターゲット語の強勢音節の持続時間、ターゲット語の F0 ピークの位置、およびそのピークの F0 値を調べた。 その結果、SVO 語順の場合、広焦点よりも対照焦点の発話においてターゲット語の持続時間とターゲット語の強勢音節の持続時間が長くなる傾向が確認された。しかし、ピークの生起タイミングが広焦点と対照焦点の実現に重要なキューとなるかについては、さらなる検証を必要とする結果となった。また、VOS 語順の場合、持続時間よりもメロディーグループを増やすことがターゲット語を際立たせるための方策として有効ではないかと推測された。