本稿の目的は、算数・数学の学力パネルデータの分析から、義務教育段階を通じた学力の社会階層間格差の変化についての実態を示すことである。分析より得られた知見は、①学力格差の変化は流動的ではなく、初期に獲得した学力はほとんど変化しないということ、②こうした学力格差は、両親が大卒の児童生徒の方が両親非大卒の児童生徒よりも高い学力水準を維持しやすいこと、③学力に対する個人の努力(学習時間)の独立したポジティブな効果は確認できたが、親学歴による学力格差は維持されること、の3点である。