社会教育実践の研究において記録または生活記録は重要な論点を提起してきた。一つは、記録は研究や研究者を見返す性質を有することから実践と研究との間には緊張関係が存在する点である。二つは、第一次史料の発掘・収集・整理および復刻出版によって、むしろ複数の読み直しと事実認識がもたらされ、より立体的な実践認識が促される点である。三つは、書く行為および書かれたものを他者と共有する行為が人間にもたらすものへの考察を導く点である。記録は研究に対しエビデンスなるものへの根本的な問いを突きつけている。