目的: 本研究では日本企業が海外事業場においてグローバルな労働安全衛生マネジメントシステムの構築を行うために必要な情報を効率的に収集するための情報収集チェックシートの開発を行った. 方法: 外資系企業での産業医経験を有する研究者2名と海外事業場の労働安全衛生活動に携わった経験を持つ3名の統括産業医で研究班を作った.労働安全衛生活動と体制構築に必要な情報と情報の入手先を検討の後,5か国10地域において現地を訪問し情報収集チェックシートを用いた情報収集を行った(第1フェーズ).その後,研究班会議で入手情報の正確性と入手先との妥当性を検証し情報収集チェックシートを改善した.その後,新たな国(1か国3地域)において情報収集チェックシートを使用し有用性を確認の上(第2フェーズ),情報収集チェックシートを完成させた. 結果: 情報収集チェックシートは,現地事業場の基本情報,安全衛生概要,安全衛生体制,安全衛生スタッフ,計画・実施・評価・改善,安全衛生活動,法令及び行政機関,現地医療制度と公衆衛生,駐在員への医療サポートの9の大項目と61の中項目で構成された.また入手先は文献・インターネット,企業(現地事業場,日本本社),現地の日本大使館・領事館,ISO認証機関,大学等の教育機関,医療機関(日本人向け,現地労働者向け)の8つで構成された. 考察: 複数回にわたる研究班会議と2つのフェーズ(6か国13地域)での現地調査により情報収集チェックシートが完成した.このチェックシートを用いることにより,初めて進出する国や地域での安全衛生活動を展開する際,必要となる情報が入手できる可能性がある.今後は,いずれかの国の現地事業場の協力のもと,チェックシートを用いた情報収集を行い,安全衛生体制ならびに活動を評価の上,具体的な取組を試行するモデル事業を実施しチェックシートの有効性を検証する必要がある.