科学技術の進展はしばしば新しい材料の登場や材料の進化によって促されるが,材料の開発には多くの時間と費用が必要である。特に長期の信頼性が要求される構造材料は膨大な時間と費用をかけて開発・実装されてきた。科学技術の進展や産業の競争力強化,安心で安全な社会の実現には新たな材料の開発の効率化が鍵である。その実現に向け,これまで蓄えられてきた多くの材料の知やデータと計算科学を組み合わせて材料の組織や特性,性能を予測する「マテリアルズインテグレーションシステム」の構築を内閣府の「SIPプロジェクト」の中で進めている。この動きはわが国だけでなく米国や欧州でも活発である。本稿では材料の組織や特性,性能を記述するデータについて構造材料を例に概説するとともに,それを活用したマテリアルズインテグレーションシステムの構成,そのためのデータベース構築の課題を述べる。