までに報告した摘果したスダチをガス貯蔵したときにみられる果汁中のAsAの増加が, 個体間のバラツキによるのではないか, さらに果皮中のAsAが果汁へ移行したにすぎないのではないか, という疑問を解消するために貯蔵試験を再度実施した。 大気中開放, 大気密封, 二酸化炭素密封で貯蔵すると果汁中のAsA濃度は上昇するが, 有意差はない。一方, AsAの絶対量においては, 有意差をもって増加したのは窒素密封貯蔵における30日目から60日目の間であった。同期間において果皮のAsA含量に変化はなく, 果汁のAsA含量の増加が果実での増加をもたらした。このときの「増加」の判定には5%以下の危険率を伴う。したがって, 窒素ガス貯蔵によってAsAの絶対量が増加しており, 分解を上まわる合成がなされたことになる。 窒素ガス中でのAsA合成の原因を知るためにGalまたはGalUAを加えて貯蔵した。貯蔵は, 果実のホモジネート, 果汁に果皮切片を加えた状態で試みた。これらの結果から次のことが知れた。窒素ガス中でのAsA合成はGalUA添加によって大きくなるがGalにその効果はない。この合成経路は窒素ガス中にスダチを長期間置くことによって開始される。