出版社:Japanese Society of Nutrition and Food Science
摘要:油脂の自動酸化に対する安定性試験法とTocの変化について検討した。 1) AOM試験ではSO, COともにPOV 10程度まではほとんどTocの分解は認められなかったが, それ以後POVの急増に伴いTocの分解率は高まり, POVとTocの分解率との間には比較的よい相関関係がみられた。 各Tocの分解速度はδ-<γ-<α-Tocの順で, Fig. 3. Correlation between rancid point (flavor score is 3) and peroxide values at the time of oven test of refined soybean oil. 油脂安定性の判定基準であるPOV 100meq/kgのところでは, SOとCOのα-, γ-およびδ-Tocの分解率はそれぞれ85, 20および4, 70, 29および11%であった。 2) 官能検査で油脂の安定性の判定基準である点数3はPOVの急激な立ち上り点と一致し, またこの時点からTocの分解が始まった。 3) 重量法試験でSOとCOの重量増加が始まりかけた時点ではすでにα-Tocの分解はそれぞれ70および80%で, 安定性判定の基準である0.5%重量増加点では各Tocはほとんど完全に分解消滅していた。 以上のことから, 官能検査で油脂の安定性判定の基準Fig. 4. Relationship between the weight gain and decomposition of tocopherol inrefined soybean and corn oil by weighing method. である点数3はTocの分解が始まりかけたいわゆる酸化初期の評価で, これに反し, 重量法試験の油脂の安定性判の基準である0.5%重量増加点はTocがほとんど完全に分解したいわゆる油脂の酸化が非常に進んだときを評価しており, AOM試験のPOV 100は上記2試験法の間で, 中位程度の酸化度を安定性判定の基準にしていることになる。