BP汚染源としてほとんど未検討の分野であるアスファルトを取り上げ, それに含有されるBPの定量法の検討に始まり, アスファルト舗装工事中の労働衛生的な面に着目した基礎的実験を行い以下の結果を得た。1) アスファルト中BP定量法の検討を行い, 前処理として酸性アルミナカラムクロマトグラフィーを行うことにより, きょう雑物による妨害を少なくすることができ, 添加回収実験において回収率約68%を示すHPLC-蛍光分析を骨子とする実用可能な方法を設定できた。2) 4ヵ所のアスファルト舗装工事現場で, ローラーがけ直後の路面上約10cmの位置の空気を捕集しBP量を測定した結果, 2.12-7.88ng/m3(対照測定値0.30-1.50ng/m3)の値を得た。また, 同時に測定した舗装用アスファルト中BP量は1.68-5.20μg/gであったが, 空気中BP量とアスファルト中BP量には相関関係は認められなかった。3)BP含量10.87μg/gのアスファルト約180gを用い, アスファルトの昇温に伴うBP揮散量についての実験室的検討を行い, BPの揮散量が温度上昇と共に増加し, 特に, 約200℃を境としてその増加が対数的となり, 300℃では約10μg/m3に達することを認めた。