BP汚染源としての自動車排気ガスについて, 運転中のエンジン内でのBPの生成, 分解, 蓄積, 排出の間における動向を知るための基礎的実験を行い以下のデータを得た.1) 自動車排気ガス, エンジンオイル及び煤に含有されるBPの抽出定量法として, Sep-Pak C18処理とHPLC-蛍光分析を骨子とした実用可能な定量条件を設定し得た.2) 八両の実働国産ガソリン車を被験車両として, エンジンオイルの劣化に伴うエンジンオイル中BP量の動向を調べた結果, 各車両ともエンジンオイル交換後の走行距離にほぼ比例的にBPが増加(最高値5.32μg/ml)することを認めたが, 同時に測定した排気ガス中BP量は, 触媒非装置の一両以外では同様な増加を認めず, かつかなり低値であった.また車両の既走行距離(老朽度)との間の相関関係は認められなかった.3) 触媒非装置の一両での排気ガス中BP量は他車に比べ数百-数千倍高く(最高値2.24μg/m3)かつエンジンオイル交換後の走行距離にほぼ比例的に増加した.4) 触媒の脱着実験により, 触媒は排気ガス中BP量を1/100以下に減少させることが分かった.また触媒前部に貯留した煤中BP量は後部に貯留した煤中BP量の約14倍であることも認められた.5) 排気管末端部内側に貯留する煤中のBP量は車両の既走行距離(老朽度)とほぼ比例していることが判明した.6) エンジン内でのBPの生成-排出の経過を煤の影響なしに追求するため, 新品の4サイクルエンジンを用いたモデル実験を行い, エンジンオイル中並びにガソリンオイル中BP量に比例して, 排気ガス中BP量が増加することを認めた.