尿中サッカリンの極微量を定量するために炎光光度型ガスクロマトグラフ (FPD) による新定法量を確立し, これを用いてヒトにおけるサッカリンの尿中排泄について検討した。本法のサッカリンの検出感度は0.5ngであった。 1) 男女おのおの3名ずつにサッカリン50mgを1回投与後尿中への排泄量を測定したところ, 投与後1時間より急速に始まり, 5~7時間で最高となりそれ以後で下向傾向を示した。 2) サッカリンの排泄率は投与後6時間で約60%, 12時間で約90%であった。しかし投与量の約5%は12時間より92時間にわたり徐々に少量ずつ排泄された。 3) 正常人の尿中サッカリン排泄量を1974, 1978年の両年に同一人10名の8時間尿を測定したところ1974年度測定では0.6~313μg (平均84μg), 1978年度測定では19~5963μg (平均1737μg) とFAO/WHOのADI 5mg/kg/dayをこえて検出されたものはいなかった。 4) 1974, 1978年度の両年を通して正常人の尿中サッカリン (8時間) の排泄量は最低0.6μg, 最高5,963μgにわたり, 変動の差は最低者の約1万倍であった。また1978年度測定者の尿中サッカリンの排泄量は1974年測定時の20倍に及んだ。 5) 糖尿病患者の尿中サッカリン排泄量を1979, 1980年の両年に測定したところ, 入院患者は食事療法がいきとどきサッカリンの尿中排泄量は著しく少なかった。しかし外来患者は甘味剤としてサッカリンを使用した食品摂取がされて尿中への排泄量は平均7725.8μg/8時間であり正常者の1978年度測定時の4.4倍となっていた。