図1, 2に示したごとくマイクロ波加熱による凝固卵白のプロテアーゼによる水解度は, 普通加熱にくらべかなり低い。生たん白質が変性により水解されやすくなることは周知のことであるが, 変性たん白質が二次的会合により凝固する場合, 会合の度合によっては水解度に差がみられることも予想される。マイクロ波加熱は電磁場内での誘電体分子の運動に起因するものであるが, たん白質分子が電磁場内で運動することはないとされている。このことは表2に示したごとく, 出力差による凝固卵白の水解度に差がみられないことからも示唆される。今回の実験では, 20秒以上の照射により試料温度が93℃に達することから, 十分卵白たん白質が変性されていると推定され, 30秒照射では写真2に示したごとくスポンジ状に凝固し, 水分含量も減少する。これらの結果から, 熱凝固した卵白のゲル内の水が急激な沸騰により膨張しゲル内に圧縮された部分が生ずる。このため凝固たん白質がさらに部分的に会合し, 普通加熱による凝固卵白にくらべ水解されにくくなるものと推定される。