摘要:目的:企業内健康増進施策であるTotal Health Promotion Plan (THP)では心肺持久能の測定を目的として運動負荷試験を行なうが,負荷中に虚血性心電図変化や不整脈を示す例を経験することかある.このため,従来は見逃されてきた無症候性心疾患が精査対象となってきている.今回,THPの運動負荷試験をきっかけにして発見される心疾患,特に無症候性心筋虚血(SMI)と重大な不整脈の頻度,患者の背景因子,予後について検討した.方法:対象は1994年4月〜1996年3月に初めてTHPを受診した4,918人,男性4,426人(46.2±8.3歳(mean±SD)),女性492人(38.0±13.2歳).運動負荷試験は自転車エルゴメーターを用い,プロトコールは原則として全国的に頻用されるLOPSを用いた.LOPSは負荷強度が予測最大酸素摂取量の約70-80%になるよう自動調節されるプロトコールである.心電図は双極単誘導CC5にてモニタリングした.結果:体調不良215人,安静時心電図異常17人,狭心痛の存在を疑った19人を除く4,667人が自転車エルゴメーターを受診した.37人(0.79%)に虚血性心電図変化,155人(3.32%)に精査の必要な不整脈を認めた.トレッドミル運動負荷試験,^ Tl負荷心筋シンチグラムなどにより,9人(0.19%)に心筋虚血ありと診断した.7人が男性であった.Cohn I型のSMIと考えられる症例が8人(0.17%)あり,その頻度は本邦既報告の1/3〜1/4であった。THP運動負荷試験陽性者37人に限ると22%の陽性率であり,適中率は低いものの,陽性者の集約効果を得ることができた.SMI群のリスク要因として,高血圧,高脂血症,糖尿病,家族歴,喫煙習慣のいずれもが母集団よりも高い有所見率であった.1名が冠動脈形成術,5人が薬物治療を受けた.3人の未治療者を含めた15〜30カ月の経過観察で心筋梗塞,心臓死は生じなかった.また,11人(0.24%)に注意すべき運動誘発性不整脈を認めた.心筋症を基礎疾患とする心室期外収縮例4例と,基礎疾患のないLown 4bの心室期外収縮例4例,心房細動2例,WPW症候群に基づく上室性頻拍1例であった.結語:THPにおける運動負荷試験はSMIの検出においての集約効果および,危険な不整脈の検出に有用であった.職場における突然死,過労死の予防の一助になるものと期待される.
关键词:Total Health;Promotion Plan (THP);Exercise test;Silent myocardial ischemia;Exercise induced arrhythmia