顔を構成するパーツを配置する課題によって著明な異常を認めた 69 歳女性と 70 歳男性 2 名の左半球損傷例を経験した。2 例はいずれも重度な失語症および上肢の習慣性動作模倣障害, 手指の構成模倣障害に加え, 自らの手を顔のパーツへ接触する動作の模倣に著明な誤りを認めた。 この 2 例の顔面部位へ接触する模倣の誤りには, 失行症に加えて顔に関する身体表象の異常も合併していると考え, 顔を構成する各パーツを配置する課題を実施した。比較対象として半側空間無視が著明な 87 歳と 78 歳女性 2 名の右半球損傷例にも実施した。利き手は全員右利きであった。 結果は, 左半球損傷例 2 名にのみ著明な空間的な配置異常が認められた。本課題における左半球損傷 2 例に認められた空間的な配置異常からは, 顔に関する輪郭と内部のパーツの相対的関係性を構築する機能が障害されたことが示唆され, その基盤には顔の意味性身体表象および視空間性表象の異常も反映された可能性がある。