原発・廃棄物処分場・軍事基地などの迷惑施設をめぐっては,立地地域少数者と域外多数者との間で利害の不均衡が発生する。この不均衡に関心を示さない域外多数者に対しては,不均衡を知った上で非意図的に迷惑施設を受容する域外多数者に対してよりも,立地地域少数者の怒りや不満といったネガティヴな情動が喚起されるだろう。シナリオを用いた実験の結果,この予測は支持された。また立地地域少数者の情動反応には,利害の不公平に対する評価のほか,域外多数者への共感も,大きな影響を及ぼすことが示された。集団価値モデルにもとづき,立地地域少数者の立場に対する域外多数者からの関心の呈示は,前者が後者からの敬意を推測する手がかりになると考察した。以上の結果より,迷惑施設をめぐる公的決定の過程で,立地地域少数者と域外多数者との相互作用を検討する重要性について論じた。