母指内転筋を主働肪とした随意努力による筋作業を負荷し, 経皮的に神経に与えられた一定条件の電気刺激によって, 主働筋から得られる筋活動電位と疲労との関係を調べた. その結果表面双極導出法によって母指内転筋から得られる誘発筋電図は, 作業時間の経過に伴って減少し, 回復期には時間の経過に伴って安静時の電位へと回復した. このような筋作業による誘発電位の減少は, 動的な筋作業および静的な持続性筋作業の場合にも認められた. このことは, 疲労によって誘発電位が減少すると報告したNaess and Storm-Mathisen (1955) およびStephens and Taylor (1972) の結果と一致するものであり, Merton (1954) の結果とは一致しない. また, 誘発電位の減少は, 神経筋接合部に伝達遮断が生じたためとするNaess and Storm-Mathisenによる解釈を支持するものである.