ケアハウスに入所している高齢者を運動軍と対照群に分け,3ヶ月間にわたって週に2〜3日の頻度で実施した運動教室が,対象者のIADL,抑うつ度,生活満足度・主観的幸福度および身体的体力レベルなどのQOLにもたらす影響について検討することを目的とした。1)運動郡のトレーニング前1ヶ月間の外出頻度,外出延べ時間,総歩数,および1日あたりの平均歩数は,個人差が大きく,いずれの項目においてもトレーシング前後で有意な変化は見られなかった。2)老研式活動能力指標および主観的健康度,毎日の気分,人間関係,生活満足度,および主観的幸福度は,トレーニング期間前後において両群とも有意な変化は見られなかった。しかし,今後希望する事柄がないと答えた者が,58.3%から20.8%に減少し,有ると答えた者が41.7%から79.2%に増加して有意な増加が認められた(p0.05)。3)GDS合計スコアはトレーニング期間前後において,運動群では有意な現象が認められ,その変化量は対照群のそれに比べて有意に大きかった。4)運動群においては握力,長座体前屈,閉眼片足立ち,および開眼両足立ちの握力中心の平均速度,移動距離に統計的な有意な変化は見られなかったのに対して,膝伸展筋群による最大等尺性筋力、反応開始時間、前身反応時間,ステッピングおよび開眼両足立ち時の圧力中心の平均速度,移動距離の成績はトレーニング前後で有意の向上した。また,特に膝伸展筋群による最大等尺性筋力,ステッピングおよび閉眼両足立ち時の圧力中心の移動距離のトレーニング期間前後の変化量は,対照群に比べて有意に向上していた。5)運動群では生活体力の歩行能力以外の項目においてトレーニング後に有意な変化が見られ,起居能力の変化量は対照群の値に比べて有意の大きかった。以上のことから,施設入所高齢者に対する3ヶ月間という比較的短期間の介入的運動指導の実践は,対象者の運動実施の意向を基に群分けを行ったこと,またそれによって両群間に人数的な偏りが生じたことに考慮すべき点はあるが,抑うつ殿改善や筋力,平衡性,敏捷性といった体力要素と起居能力といった生活体力の一部の向上を引き起こし,部分的ではあるがQOLの改善に一定の有効性を有する可能性が示された。