本研究では,(1)ゲーム性が高いこと,(2)能力的に関係なく誰もが実践できること,(3)教師の専門的な指導の関与が少ないこと,という条件を満たすオーバーハンドスロー能力改善ののための学習プログラムを考案し,小学2・3年生男女を対象に週3回1日12-20投(学習段階により異なる)で3週間にわたる授業実践を通して,その有効性について検討した。結果は次のように要約できる。1)2年生男子・女子,3年生男子・女子いずれにおいても有意な遠投距離の向上が認められた。2)男子においては学習前の遠投能力水準が低い者ほど,大きな遠投距離の向上が認められた。男子には学習により遠投距離が低下したものが12名いたが,このうちの4名は,学習前の遠投能力が優れた児童(平均+1標準偏差以上)であった。女子においては,学習前の投能力水準と遠投距離の伸びの間には有意な関係が認められなかった。3)2年男子,3年男子においては遠投距離の向上は投射初速度の増加によるものであったが,女子は投射初速度,投射角度の両要因の増加に影響を受けたものと推測できる。4)2年生男子・女子,3年生男子・女子いずれにおいても,脚の準備動作や主動作中の体幹動作などに習熟が認められた。しかし,いずれのグループにおいても腕の準備動作には習熟が認められなかった。以上のことから,小学2・3年生の男女にはオーバーハンドスローの学習効果があること,本研究で考案した学習プログラムは,一部に改善の余地があるものの,全体的には遠投距離を向上させるのに有効であることが確認できた。