企業型確定拠出年金の運用メニューはどのように選ばれているのか、それは加入者にとって望ましい年金運用の選択肢となっているのか。我々は企業型確定拠出年金のスポンサー企業64社が採用している投資信託のデータを基に、確定拠出年金のガバナンスについて検討を行った。驚くべきことに、選定された投資信託の多くは、スポンサー企業とその親会社の主要な取引銀行、幹事証券会社、主要な取引先企業が運用や販売に関わる投資信託であった。その傾向は、投資信託の選択を社内委員会で決定する企業でより顕著であった。さらに、スポンサー企業は、パッシブ・ファンド以外のファンドをより多く選び、投資信託の運用会社数は少なくする傾向があった。選ばれた投資信託は、代表的なDC向けファンドよりもコストが低いという仮説は支持されなかった。スポンサー企業の多くは、社内委員会での協議や運営管理機関の助言によって運用メニューを選定しているが、投資メニューの選定という観点から見ると、確定拠出年金のガバナンスには改善の余地があるという結論となった。