本稿では、協同組織金融機関に分類される信用金庫が、本店所在地外の地域に多くの店舗を設置している状況に注目し、そうした信用金庫の他地域進出が、自身の経営パフォーマンスに及ぼしている影響について明らかにすることを目的とした。具体的には、東海3県(愛知、岐阜、および三重)に本店を置く信用金庫をサンプルとし、本店所在地外に多くの店舗を設けている信用金庫ほど、高い利益を上げているかを実証的に分析した。そこから、東海3県の信用金庫全体では、株式会社である地域銀行とは異なり、必ずしも強い利潤動機に基づいた他地域進出は行われておらず、むしろ取引先企業の経営をサポートすることをも目的として他地域へ進出している可能性が示唆された。一方で、高収益を上げづらいと考えられる金融機関間の競争が激しい地域に本店を置く信用金庫は、本店所在地にはない収益機会を求めるべく、(リスクをとってでも)相対的に高収益が期待できる競争の緩やかな地域を含めた他地域へ進出し、高い利益を上げることに成功している可能性も示されている。