この研究は, 立位姿勢を保った人体が, これを引き倒そうとする外力に抵抗して,いかに立位姿勢を保持するかを, 9つの異なゥた抵抗姿勢について検討したものである. 具体的には, 牽引ロープにかかった最大張力, すなわち最大抵抗力を測定し, これを外力に対する立位姿勢の安定度の指標とし, 次の結果を得た. (1)各抵抗姿勢とも, 牽引速度の増大にともない, 最大抵抗力は大きくなる. (2)直立での抵抗姿勢の場合に限り, 剛体牽引の場合と同様に, 最大抵抗力(Y:kg)と牽引速度(V:cm/sec)との間に2次式の関係が得られた. Y=a_0+a_1V+a_2V^2(a_0, a_1, a_2:定数). (3)各牽引速度において, 足蹠位置条件の変化より, 膝や腰の関節屈曲条件の方が最大抵抗力の増大に寄与する割合が大きい. (4)「構え」の効果は, 牽引速度が増大するほど減少する. (5)立位姿勢の安定には, 剛体の安定条件に加えて, 筋力発揮要素が大きく影響する.