本研究では造林地内の空間不均質性に着目し,1)造林木の成長および造林木と雑草木との競合関係が地形により異なるか,さらに,2)場所によるランダム効果の取り扱い方の異なるモデル間で地形の効果が異なるか,を斜面長100 m傾斜角約30 度の4 年生のスギ若齢林で検討した。地形変数(尾根からの距離と傾斜角)が3,4 年生時のスギの樹高およびスギと雑草木の競合関係に与える影響を三つの統計モデル(ランダム効果を考慮しないモデル,場所のランダム効果を考慮したモデル,空間自己相関を考慮したモデル)で解析した。結果,尾根からの距離が大きいほどスギの樹高が高かった。スギの樹高が低い,または,尾根からの距離や傾斜角が大きいほど,雑草木から被圧されやすかった。他のモデルと比べ,空間自己相関を考慮したモデルでは地形変数の効果の信用区間は広がり,効果の評価が下がった。スギの成長や雑草木による被圧が斜面位置によって異なることから,斜面位置によって下刈頻度を変えることも下刈省力化の選択肢の一つとして考えられるが,一方で,要因の検出において空間情報の取り扱い方やサンプリングの方法を十分に検討する必要があると結論付けた。