本研究はH 型架線による集材の可能性を判断するための目安を広域的に示すことを目的に,H 型架線の架設可能地および集材可能地を面的に抽出する手法を,地理情報システム(GIS)を用いて開発した。まず数値標高モデルをもとに,GIS を用いて半径750 m の範囲の尾根の標高値の平均を通る架線架設面を算出した。そして架線架設面から標高値を減算し,架線の垂下量を考慮して架線下高141 m が得られる架線架設可能地を抽出した。さらに,路網の有無や人工林の分布情報と重ね,人工林集材可能性評価図を作成した。上記手法を三重県大台町の人工林14,911 ha に適用したところ1,045 ha が集材可能地とされた。実際の架設事例との比較の結果,本研究手法による集材可能地面積は実際の集材範囲より1.26 ha 広かったが,その範囲を概ね抽出していた。抽出面積の違いは実際の支点が本研究手法で想定された支点よりも低く設置されたことに起因しており,想定通りの結果といえた。本研究手法は荷上索の垂下量の推定などが課題として残るものの,比較的簡便に広域を評価でき,多様な作業システムに対応した森林管理計画を立てる上で有効であるといえる。