育苗時に施用した溶出期間の長い肥料(緩効性肥料)がヒノキ実生苗の初期成長に及ぼす影響を明らかにするため,植栽後2年間の成長と部位ごとの重量変化をコンテナ苗と裸苗とで比較した。コンテナ苗は緩効性肥料(溶出期間700日)を施用し,マルチキャビティコンテナで1年間育成した。植栽時のコンテナ苗は,裸苗より根元直径が小さく,樹高および比較苗高が大きかった。2年間の樹高および根元直径成長量や同期末サイズは,コンテナ苗の方が大きかった。比較苗高の低減はコンテナ苗で大きかった。苗木のT/R 比は苗種間で差がなかったが,部位(葉,幹,枝,根)ごとの乾燥重量の増加はコンテナ苗の方が大きかった。樹高や根元直径の相対成長率は,植栽1年目にはコンテナ苗が優れていたが,植栽2年目にはその優位性が低下した。これらのことから,育苗時に施用した緩効性肥料の影響は時間経過とともに低減するものの,ヒノキ実生苗の植栽後の初期成長の促進に有効であることが示唆された。