電子機器は操作が複雑であるため, 高次脳機能障害を呈する症例では使用が困難であることが多い。電子機器操作は言語, 行為, 記憶, 視覚/ 視空間認知, 遂行機能等のさまざまな認知機能が必要となり, 各症状からの検討が求められる。そのなかでも, 視空間認知に注目し, 脳損傷後の Bálint 症候群を呈した症例の電子機器操作 (電子機器操作でもっとも基本となる数字入力能力) について検討した。その結果, Bálint 症候群を呈した症例は電子機器操作の数字入力において困難が生じていた。視覚性注意障害のみ呈する軽度の Bálint 症候群であっても数字入力の 5 桁以降の数字入力で遂行が困難であった。日常生活でも同様に, 軽度例であっても工程数の多い銀行 ATM 操作では困難が生じていた。電子機器操作は従来の道具とは異なり, 視空間機能を多用する可能性が考えられ, 視空間障害が現代の電子機器操作に与える影響を具体的に述べた。