従来の研究は, いやがらせ被害時における援助要請と援助要請の回避を単一の概念として捉え, それらの性質の違いには着目してこなかった。そこで, 本研究では, これらを自律的援助要請, 依存的援助要請, 援助要請の回避, 平気な振りの4側面から捉え直し, 友人と教師を援助者として想定したいやがらせ被害時における援助要請尺度を作成し, 中学生がどのような援助要請や援助要請の回避方略を用いていやがらせに対処しているかについて検討した。分析の結果, 作成した尺度は, 対友人, 対教師ともに「自律的援助要請」「依存的援助要請」「平気な振り」の3因子から構成されていた。次に, これらの得点に基づいてクラスタ分析を行ったところ, 6群に分類された。各群の特徴を検討した結果, 中学生の中には, 援助要請の志向性が低いものと, 援助要請の志向性が低いことに加えて, 平気な振りの志向性が高いものがいることが明らかになった。さらに, 中学生の中には, 自律的援助要請, 依存的援助要請, 平気な振りが両立しており, 中学生はある方略を一貫して用いるのではなく, 援助を求める対象によって, そして同じ対象の中でもそれらの方略を組み合わせて用いている可能性が示唆された。