多雪地帯では大量の雪が屋根上に積もり,天候の回復に伴って気温が上昇すると,雪間の結合力が緩んで屋根上で雪の分裂が始まると共に屋根との間に働く力も弱くなり,雪は屋根上を分裂しながら滑り,最終的には屋根から大量の雪が落下する.屋根から落下した雪は路面上に拡散するだけでなく,車上や通行人に衝突することもあり,非常に危険である.本稿では屋根雪が分裂しながら滑落する様子を表現する手法について報告する.雪は均一に見えても時間の経過と共に密度や含水率が変化し,屋根の位置に応じて雪質に違いが現れる.また,雪質の変化が原因となって,雪間に働く結合力が変化する.さらに,屋根上を滑る雪には重力や摩擦力以外に雪と屋根との間に働く付着力が影響を与える.したがって,我々はこれらの力を考慮することで,拡張個別要素法を用いて屋根雪の分裂と滑落のシミュレーションを行ったところ,実現象と同様な表現が可能であることを確認した.