水中体重計量法により身体密度から体脂肪量を推定する際に用いられる肺残気量(RV)を身体各部の計測値から予測するための重回帰式の作成を試みた. 被験者は, 比較的身体トレーニングレベルの高い, 順天堂大学体育学部男子学生40名(年齢18-26歳)である. 9種類の形態計測値, RV実測値, 肺活量(VC)が, それぞれの被験者ごとに求められた. Wherry-Doolittle test selection methodにより, RV予測に貢献する項目の選択と, それらによる重回帰式を検討した. その結果, 以下の3種類の式を作成した. (1) RV=35.451(X1)-37.870(X2)+8.344(X5)+6.142(X10)-6029.4 (R=0.533, SEE=231.0ml) (2) RV=34.986(X1)-31.544(X2)+10.228(X5)-4476.5 (R=0.491, SEE=237.8ml) (3) RV=25.073(X1)-12.393(X2)-2146.5 (R=0.370, SEE=253.6ml) ただし, RV: 予測される肺残気量(ml), XL: 身長(cm), X2: 体重(kg), X5: 胸厚(mm), X10: 周囲(mm). これらの回帰式によるRVの予測能力は必ずしも高いとは言えない. しかしながら, RVの実測値を得ないで体脂肪推定が行われる場面において, しばしば便宜的に用いられてきたRV推測値(肺活量の割合や単なる一定値)の利用の不確かさに比較すれば, 予測の誤差平均と誤差分散を約30%小さくすることが認められた.