この研究の目的は, 幼児がリズム・パターンに同期していく過程を実験的に検討することであった. リズム・パターンは〓=54の速さの[figure]で, 被験者は3歳から6歳までの80名の幼児であった. 被験者は, 発達別に4つの年齢別下位集団に分けられ, その下位集団は, 次のような方法でグループAとグループBの2グループに分けられた. すなわちグループAは, このリズムパターンの時間的要素であるところの〓と♪のパルスへの反応を学習した後, リズム・パターンに同期するメンバーで構成し, グループBは, リズム・パターンに同期させられた後, 〓と♪のパルスへの反応を学習するメンバーで構成した.そしてこれらのグループについて比較検討した結果は, 次の通りである. 幼児がパターン全体に反応する以前にパルスを学習することは, 同期には役に立つであろうが, パターン全体の把握には貢献しない. 特に年少の幼児の場合には, そのパルスの学習が幼児の全注意をひきつけるため, かえって反応の妨げとして作用する. 幼児は, 始めリズム・パターンを, 全体としてあるいはある手がかりによって大まかにとらえ, 後に彼らの知覚が発達するにつれて, 全体といろいろな部分とのリズム的関係を次第に認識していく. 要するに, 幼児は, 各要素の加算的過程としてリズム・パターンを知覚するのではなく, 各要素の布置を通して, 一つの形態(ゲシュタルト)あるいは全体として知覚すると結論することができる.