本研究の目的は, 1956〜60年, 1964〜68年と, 1971〜74年に実施した測定結果に基づいて, 10才〜14才までの日本人児童の形態的発育と機能的発達を分析し, 形態的発育における促進現象の考察と, 機能的発達における都市と農村の年代差を明らかにすること, さらに, 形態的発育と機能的発達との関連について相対成長の立場から考察することである. 対象は縦断的に測定された都市児童の男子316人, 女子283人, 農村児童の男子110人, 女子84人である. 測定種目は身長, 体重, 握力, 立幅とび, 立位体前屈, サイドステップ, 肺活星である. 結果を要約すると次のとおりである. 1. 近年における日本人児童男女の形態的発育は顕著で, 大型化の傾向が続いている. 2. 男子の身長における年間発育量のピークは1964〜68年と1971〜74年の都市, 農村ともに11〜12才で同時期に出現している. 3. サイドステッフ゜, 肺活量, 握力の発達傾向は地域や性によって違いがみられたが, 都市, 農村の男女とも近年の児童がすぐれていた. 4. 身長〜握力について, アンバランスな発達は身長152cm以後の問題として捉えることができる. 身長, 立幅とびについて, 近年の児童がより遅く変移し, 大型化により増大した体重を移動させるだけの筋力やパワーが, 形態的発育に比例して増大していない. 身長〜肺活量について, 年代的な差異はほとんどない.