100m, 11秒4〜13秒3の記録をもつ成人男子5名について, 屋外直走路で70mを全力疾走させた. その際, 主として下肢筋群について, 18素子万能型脳波計を用い, 有線で筋電図を記録し, 加速区間, 全速区間における疾走中の筋作用機序を明らかにした. スタート直後の1〜2歩と3〜4歩目以降の下肢筋群の放電様相には顕著な差異が指摘され, 3〜4歩目以降の放電様相は, 全速区間のそれに比し顕著な差異はみとめられなかった. 1〜2歩目の接地期では支持脚側の内側広筋, 大腿直筋, 大腿二頭筋, 大股筋に顕著な放電がみられ, 3〜4歩目以降の接地期後半では大腿二頭筋にのみ放電がみられた. また, スタート直後の1〜2歩では3〜4歩目以降にみられる支持脚側の股関節の伸展と遊脚側の大腿の積極的な前上方への引き上げに加えて, さらに股関節の伸展を得て, 身体を前方に推し進めているものと考えられた.