種々の垂直面内において負荷方向を変化させながら下肢の挙上を行なわせ股関節の運動に関与する下肢11筋の筋電図を記録し, 各筋の働きかたについて解剖学的, 力学的に検討した. 中殿筋前部は, 矢状面における屈曲開始位置では動作の規制のために働き, 他はいずれの面でも挙上に参画している. 中殿筋後部は, 60゜〜150゜で挙上に参画した. 大腿直筋, 縫工筋は0゜〜90゜の面で挙上に参画する. 30゜以降90゜の面ではむしろ内転の分力が生じるため, やや外向きの負荷に抗しながら動作を行った場合に放電は最も顕著であった. 長内転筋は0゜〜60゜の面では挙上に参画していた. 大腿筋膜張筋は120゜までの面では挙上に参画していた. 薄筋はいずれの面においても挙上に参画しなかった. 半膜様筋は105゜, 大腿二頭筋は150゜より挙上に参画し, 放電量はやや外向きの負荷に抗しながら行った時に顕著であった. 大内転筋は135゜以降の面で挙上(伸展)に参画した.