親水性の界面活性剤であるtetraglyceryl monooleate (MO-310),hexaglyceryl monostearate(MS-500),decaglyceryl monooleate(MO-750,MSW-750)を5%澱粉懸濁液に添加後,95℃で10分間加熱,糊化させた.この糊液を試料とし,10℃および25℃保存の場合の経時的な粘度の変化ならびに反射率の変化,また,これらの試料にゲル形成が認められるまでに要する時間等についての界面活性剤の種類および添加量の影響等々について検討し,次の結果を得た. 1)MS-500を5%小麦澱粉懸濁液に添加後,糊化さ,せた溶液を10℃および25℃で保存し,その粘度変化,透明度変化,ゲル形成を検討し,MS-500の濃度(0.05~0.3%)に依存した老化の抑制効果が認められた. 2)MS-500の添加量に依存した増粘作用および糊液粘度の安定化がみられた.10℃保存の場合は0.2%以上の添加により,25℃保存の場合は0.1%以上の添加により高粘度,かつ安定な糊液が得られた. 3)5%小麦澱粉懸濁液に,HLBが異なる数種類の界面活性剤を添加し加熱糊化後,10℃および25℃に保存したときの粘度安定性を調べた.その結果,粘度安定性は全体からみれば,よく改善され,界面活性剤の添加によって,0時間の粘度値が上昇することが認められた.また,同じmonooleateであるMO-310とMO-750の増粘作用および老化抑制作用が著しいことがわかった. 4)数種類の澱粉について,その糊化放置後の表面反射率および粘度変化について調べた.その結果は,使用した澱粉の分子量分布,結合様式の違いによるためか,一定の傾向は得られなかった. 5)界面活性剤の添加によりゲル形成を起こしやすくなったのは,単に老化による問題だけではなく,分子内および分子間結合に対する界面活性剤の影響も考えられる. 6)澱粉糊液では界面活性剤の添加によって白濁するのみならず,不透明化した糊液の安定性も著しく増大することがわかった.また,添加量の増加とともに反射率が増加するが,全般的に初期の変化が大きいことが認められた. 7)MS-500を添加した5%小麦澱粉懸濁液の糊化後6時間放置した試料の「老化指数」と「老化混濁度」を検討してみると,増粘と老化抑制との間に一定の相関性があることがわかった.