目的
本研究は、国際看護学実習前後で学生の意識を比較し、看護基礎教育における国際看護学実習の意義および国際看護学実習の教育効果を検討することを目的とした。
方法
途上国で実施する実習を含む国際看護学実習を必修科目とする国立看護大学校の4年生を対象に、2012年から3年間、国際看護学実習前後で無記名自記式質問紙調査を実施した。数量データは統計的手法により、記述データは質的分析方法により分析した。
結果
実習前191部(有効回答率67.0%)、実習後81部(有効回答率28.4%)の回答を得た。国際看護に興味がある学生は、前104名(54.5%)後48名(59.3%)で、国際看護学実習は将来の自身の看護活動に有益であると考える学生は前168名(88.0%)後69名(85.2%)だった。実習前後の比較では、国際看護についての意識のうち、社会や文化の多様性・特殊性は健康に影響、日本の保健医療と看護の現状理解、世界の保健医療と看護の現状理解、社会や文化の違いは看護に影響が実習後に有意に高くなった。国外実習についての意識の実習前期待感と実習後達成感のうち、文化の違いが看護に与える影響を考える、日本ではできない経験ができる、実習国の学生や教員と関係を深めるが有意に高くなった。また、不安感は有意差のあったすべての項目で低くなった。準備性では語学(英語)学習が有意に高くなった。国際看護学実習の将来の自身の看護活動への有益性は、実習前後で有意差はなかった。有益だと思う理由として、実習前6カテゴリー、実習後5カテゴリーが抽出された。«自己の内面的な成長»«国際性の醸成»«看護観の形成»«国内の国際化への準備»の4カテゴリーは、実習前後で共通していた。実習後の将来の自身の看護活動への有益性には、国際医療協力の実践希望、国外実習の達成感と有意義感が有意に影響していた。
結論
本研究から、国際看護学実習は、看護基礎教育における効果的な教育方法のひとつで、また、国際的な看護人材の育成における意義も示唆された。教育効果を高めるためには、特に国外実習についてのより具体的な情報の提供による学生の準備性の向上が必要である。