非破壊的な樹液流測定法の一つである幹熱収支法は,熱収支式から樹液流量を求める際に,樹液流がヒーターを通過する前後の温度差を用いる。従来は,これをヒーター上下の温度差で代用して主として草本に適用されてきた。木本を対象とする場合にはプローブが大型になりヒーターを通過する時間が大きくなるためヒーター上下の温度差と樹液がヒーターを通過する前後の温度差との違いは無視できなくなる。この点を考慮した改良型幹熱収支法を樹高7.5m, 胸高直径10.5cmの22年生ヒノキに適用し,切断面からの吸水量と比較した。ヒーターを通過する時間は樹液流速度に依存する変数であるが,反復的な手法により個々の時刻での最適値を決定することができた。改良型幹熱収支法から得られる樹液流量の変化は切断面からの吸水量とよく適合した。