本稿では,高知工科大学社会連携部と高知県工業会が初めて組織的に連携した事例を取り上げ,研究開発体制の構築に至った背景と経緯について報告した.そして,この産学官連携の体制構築に当たり,組織としてのコーディネート部門およびそこに属する個人としてのコーディネータが果たした役割を述べ,地域イノベーション創出における産学官連携コーディネート活動のありかたについて考察した.その結果,産学官連携コーディネート活動をより効果的,効率的に進めるために,関係する組織間の意思決定が必要であり有効であることが示された.また,組織間連携に支えられることで,個々のコーディネート活動の公平性と透明性が確保されることも示した.そして,産学官連携コーディネート活動に内在する要素である,「生きた情報」と「密なる人的ネットワーク」をより有効に活用するためには,組織間の意識共有と意思決定が重要であることが,本事例から示された.