1. 発芽大麦種子中より, 硫安分画, DEAE-セルロースイオン交換体クロマトグラフィー, Sephadex G-150 (super fine) によるゲル濾過, ハイドロキシルアパタイトカラムおよびクロマトフォーカシングにより, D-酵素を精製した. 精製酵素は, ディスクゲル電気泳動でG5を基質としたヨウ素による活性染色では単一のバンドを示したが, 蛋白質染色では, 活性のバンドと一致するもののほかに, 希薄な3本のバンドを認めた. しかし, α-アミラーゼ活性, β-アミラーゼ活性, α-グルコシダーゼ活性, R-酵素活性は検出されなかった. 2. 本酵素の作用最適pHは6.5, 作用最適温度は45℃であり, pH 6.5-12.0の範囲, および25-45℃の範囲で安定であった. また, 酵素活性を高めるような金属イオンは検出されず, Ag+, Hg2+イオンによって活性は完全に阻害された. 一方, p -OHMBは顕著な阻害効果を示した. したがって, 本酵素はSH酵素であると考えられる. 3. 本酵素を一連のマルトオリゴ糖に作用させたところ, とくに反応初期において, G3からはG5とG1を, G4からはG7とG1を, G5からはG7とG3を, G6からはG8とG4を生成し (Fig. 12), 時間の経過とともに, いずれもG2を除く一連のマルトオリゴ糖系列を生じた. これらの結果は, Whelanらの報告した基質中の “禁じられた結合 (forbidden linkages)” の説を裏づけるものである. 4. 本酵素をG1の存在下で可溶性澱粉に作用させると, ヨード呈色による吸光度が直線的に減少し, G3を生成した. この場合, G1が受容体として作用し, D-酵素は, 可溶性澱粉からG2を転移することにより, 高分子を分解してオリゴ糖を生成するといえる.