作業性の改善および製造コストの低減を目的に一日放置した蒸留残液を用いて返し仕込みによる特定米穀からの米焼酎製造のための実用化試験を行った。得られた結果を以下に要約する。 (1) 醪粘度低下用酵素として Trichoderma 起源のセルラーゼ系市販酵素剤Vを選択し, 小仕込みによりその添加量を醪1 l に対してタンパク質濃度で23mgとした。また, 一日放置した蒸留残液を用いても醪1 l に対してクエン酸を3g以上添加することにより, 雑菌の増殖を防止することができた。 (2) 小仕込み試験の結果に基づき, 排出された蒸留残液にクエン酸を添加し一日放置した後, この蒸留残液に掛け米として特定米穀と選択した酵素剤Vを添加し, 実用化試験を行った。7日後 (8日目) に生成されたエタノール濃度は18%v/vに達し, 醪中の乳酸濃度および酢酸濃度はそれぞれ2, 130mg/ l , 180mg/ l 以下であった。2回の実用化試験でのアルコール収得歩合は467m l /kgと478m l /kgとなり, 従来の収得歩合450m l /kgに対して4~6%高いものであった。 (3) 4名のパネラーによる官能試験 (3点法) では, 3名が評価1を付け, 返し仕込みで製造した焼酎はエステル香が従来のものよりも高く, 若干華やかすぎるところもるが, 甘味, うま味があると評価された。