わが国の食品流通において,プラスチック素材を用いた食品パッケージは食品の保存性や輸送性の向上をもたらし,生産者から消費者に対して大きな利便性をもたらし,食品品質の保持や腐敗による健康被害の低減についても大きな貢献をしている。化学製品の製造にもちいられる原料や副生する化学物質の中には,生体の生理機能に影響を及ぼす内分泌攪乱物質が存在することが明らかになり,廃棄物として環境中に拡散していることが知られている。キノコ,カビ等の真菌類が有機化学物質を分解する機能をもつことも知られており,醸造用麹菌についての研究も徐々に明らかになっている。本解説では,醸造用麹菌のビスフェノールA及びアルキルフェノール類の分解能力について,これまでの研究をまとめてわかりやすく解説していただいた。本解説で紹介された研究をもとに,麹菌による化学物質分解の生化学的研究がさらに進展することが期待される。