同一圃場,同一方法で栽培された2006~2010年秋田県湯沢市産の酒造好適米「秋田酒こまち」について,デンプン特性と出穂後温度の関係を検討し,次のことが明らかとなった。 (1)登熟期気温との関係では,過去の報告に一致して「秋田酒こまち」においてもデンプンの粘度特性におけるRVAの粘度上昇開始温度,糊化特性におけるDSCの糊化開始温度(T0)およびアミロペクチンの分子構造について極めて高い相関関係が認められた。 (2)登熟期気温の差が大きい2010年産と2009年産のアミロペクチンの分子構造を比較した結果,2010年産米はデンプン枝作り酵素BEⅡbの欠損変異体米に類似していた。 (3)高温登熟した2010年産米は,BEⅡbタンパク質の発現量が低下していた。これに加えて,高温により相対活性も低下したため,トータルのBEⅡb活性が大きく低下し,難消化性のアミロペクチン分子構造に変化したことが示唆された。 (4)古米化の影響を調べるために白米の脂肪酸度を分析した結果,貯蔵期間との相関関係は認められなかったが,登熟期気温と高い正の相関関係があり,アミロペクチンのDP6-13の比率においても高い負の相関関係になることが明らかとなった。