低メトキシルペクチンのミルクゼリーへの利用を目的として, りんご低メトキシルペクチン (1%) を試料とし, 対照に寒天 (07%) およひコーンスターチ (7%) を用いたミルクゼリーを調製し, 機器測定によって物性を比較検討するとともに, セマンティック・ディファレンシャル法を用いて官能評価を行った結果を要約すると, 以下のようてある. 1) レオロメーターによって測定した3種のミルクゼリーのテクスチャーを比較すると, ペクチンゼリーは, やわらかいがくずれにくく, 付着性は小さいが粘りの大きいゼリー特性をもっているのに対し, 寒天ゼリーは硬く, もろい特性を, コーンスターチゼリーは, 硬さは中間に位置しているが, くずれにくく, 付着性の大きい特性をもっていることが認められた. 2) クリープメーターを用いて静的粘弾性を側定し解析を行った結果, いずれのミルクゼリーも, フックの弾性体, 2組のフォークト体の粘弾性体およびニュートン粘性体からなる6要素模型て示すことがてきたペクチンゼリーは, 3試料中, 弾性率, 粘性率ともに最も小さいが, 遅延時間のτ1が大で, 弾性に比べて粘性が大きく, 変形速度がゆるやかなゼリーであることが認められた. 3) セマンティック・ディファレンシャル法によって得られた各ミルクゼリーの食味特性のプロフィルでは, ペクチンゼリーはきめが細かく, 粘りがあり, 口当りのよいゼリー特性をもっていることが認められた. また, 食味特性の特徴を因子分析 (主因子法) によって抽出した結果, 第1因子は, 粘性と硬さの因子であり, 第2因子は嗜好性の因子であった.第1, 第2因子得点を審査員別, ミルクゼリー別に求め, 2次元空間図上にプロットし, それらの相互関係を図示した. 以上の結果より, ペクチンミルクゼリーは, 寒天およびコーンスターチミルクゼリーに比べて, 粘性をもち, 総体的にソフトなゼリー特性を有し, ニュータイプのデザートゼリーとしての利用に期待をもてることが認められた.